9回目のありがとう

毎年同じことを言ってる。
あの壇上に立ち、あの光景を見、いつもの感情に包まれる。

――ありがとう――。

なんて陳腐な言葉。
けど、それ以外の言葉を私は持っていない。

思えば、私は何も持たずに東京に来た。
SMも緊縛も大した経歴も実績もない。
水商売もそうだ。
蒼月さんのように計算が得意な訳でも、人心掌握に長けている訳でもカリスマ性がある訳でもない。
ましてや、狡猾な戦略や地道な努力なんかも得意ではない。

それでも、何が何でもやるしかない。

何も持っていない私は一人で何とかしようと頑張った。

中々出ない結果。
紆余曲折。
トライ&エラー。
本当に繰り返し挑戦出来ていたのか?

ある時ふいに気付いた。

そうだ。
私は何も持っていないんだった。

そこからやっと、少しずつスタッフに頼り始めた。
私が持っていないもので彼女たちが持っている物は少なくない。

少し気になることがあった時、注意したり指示を出したりする前に少し様子を見てみよう。
ひょっとすると、その行動には私が気付かない理由があるのかもしれない。
また、今は出来ていなくても、来週には出来ているかもしれない。
黙ってても出来ることなら、無理に今注意してモチベーションを下げることはないんじゃないか?
いやいや。お客様とは一期一会。取り返しが着かなくなる前に解決しておかなきゃいけないんじゃないか?

答えはケースバイケース。
どちらが正しいかは、時間が経たないと分からない場合もある。
少なくとも、私よりはひなの方が見えていることも多々ある。

そこで、なるべくスタッフ一人一人に注意していくよりは、なるべく、ひなとだけ時々話すようにした。
「今日の彼女のアレはどうなん?」
「いえ、アレはこういう意味があって、あの場合はアレで良かったと思います」

なるほど。

もちろん、慣れてきたスタッフには、やはり私が直接言うことも多々あるし、ひなに任せていたって間違うこともある。

けど、それを許してきてくれたのは多くのお客様。

私の未熟さに失望されたこともあったでしょう。
気分を害されたこともあったでしょう。
それでアルカ東京を嫌になって来なくなってしまったお客様もきっといらっしゃると思いますし、それに関しては「申し訳ありません」という気持ちしかありません。
が、逆に、それでも温かく見守ってくださったお客様方のお陰で、私たちは9年という長い年月を乗り越えてくることが出来たのです。

そこで。
最近、海外や地方の出張が多くなったのを機に、今年の周年は何も準備をしないことに決めました。

スタッフにも何も言わず、黙って推移を見守ることにしました。

チケット及びフライヤーの制作に始まって、ネット予約や畳の手配から各店舗へのご挨拶状、果てはボランティアのお客様方の手配まで。
時折、いや、最後の方は毎日のように前売り券の売上状況だけを確認して、それでも何も言わずに見守ってきました。

あと1月。
あと半年。
あと10日。
1週間。
3日。

その度に黙っていてもひなの方から報告が上がってきます。
「去年はこの時期○○枚でしたが、今年は既に○○枚売れています。まだ少ないですが、このペースなら大丈夫だと思います」

怖いです。
自分が何もしないということは想像していた以上に怖いことでした。

けど、スタッフは自分たちでお客様方のご協力も得、確実にパーティーを成功へと導いていってくれました。

8月5日。
総勢350名近いご来場数というのは、アルカディア東京始まって以来の集客数。

陳腐な言葉です。
けど、それ以外の言葉を私は持っていません。

ありがとう。

本当に心から
ありがとうございました。

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私は9年経った今でも、何も持たない未熟な人間です。
これからも、数々の失敗を重ねていくことでしょう。

けれど、今年で確信しました。
このスタッフ達と、ウチの温かいお客様方がいれば大丈夫。
毎年次の周年など考えることも出来ませんでしたが、今回は違います。

来年8月4日(日)は、きっと素晴らしい10周年をお見せすることが出来るでしょう。

そして、どうかこれからも、10年目を迎えるアルカディア東京を何卒よろしくお願い致します。

2018年8月5日
ARCADIA TOKYO
堂山鉄心

「9回目のありがとう」への1件のフィードバック

  1. はじめまして

    blogを見せていただいた感想

    素敵なお店ですね🎵

    主さまに 行ってみたいです。 とおねだりをしてしまいました。
    主とのタイミングが合いましたらお伺いさせていただきます🎵

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